コイシイヒト
「意味わかんない」
少し不機嫌になった健史の声に、不意に振り返る。
白黒はっきりしないとすぐに不機嫌になるところ、変わってないね。
わたしは重い唇をゆっくりと開いた。
「あのね、本気の恋をされちゃったの……」
「え……」
健史はわたしの言葉の意味を解釈していない表情をみせた。
「だから、わたしの旦那さんね、本気で同僚を好きになったんだって」
これで理解出来るだろって健史の顔を見ると、健史は言葉を飲み込むように小さくうなずいた。
ああ、言っちゃった……。
よりによって昔付き合ってた健史に。
幸せな姿を一番見せたかった人に。
大きなため息が自然と零れた。