コイシイヒト
思いがけない言葉に驚いた。
いつも真っ直ぐで、嘘をつかない健史の口からそんな言葉を聞くなんて……。
健史の顔を見れないまま首を横に振った。
そんな事、出来ない。
健史だって本気じゃないでしょ……?
そんな事を言う健史、好きじゃないよ。
嫌だよ。
なのに、胸の戸惑いはドキドキへと変わっていった。
「夕実、酒すすんでないね?」
「えっ、そんな事ないよ」
わたしのグラスをチェックする健史。
さっきまでは飲みすぎだって言ってたくせに……。
正直、お酒すら喉を通らなくなってた。
健史のせいだよ。
健史があんな事言ったから……。
それなのに健史は、更にわたしを追い詰める。