コイシイヒト
「真っ暗だね」
「転びそう」
「人いないねー」
独り言のようにペラペラと口を開くわたしは、心の中を読み取られたくなかったんだ。
自分でもはっきりとわかっていない感情を、健史に見られたくなかった。
それなのに健史は……
いつもわたしの心を見透かす。
「ねえ、手を繋ぐのは悪い事じゃないの?」
「え……」
街灯に照らされた瞬間、前を向いてた健史がわたしの顔を見つめる。
そんな質問しないでよ。困るよ。
わざとだ……絶対わざとだ。
「わ……悪い事です」
健史は視線を逸らしたわたしを見て、クスクスっと笑った。
そして沈黙になったわたしの手を、ぎゅっと握った。