コイシイヒト
ホテルの一室に入ったわたしたちは、電気をつけないままキスを重ねた。
明かりをつける事が怖かった。
現実の世界を見せつけられるようで。
何もかもが一時の夢だと思い知らされるようで。
健史とのキスは、本当に不思議だった。
二人にはとても長い空白の時があったのに、
互いに別の誰かを愛してたのに、
あの頃と変わってない。
キスの呼吸が同じだった。
わたしを抱き締めていた健史の右手が、服の上から胸を包む。
けれど一瞬のうちに、その手は服の中に潜り込んできた。