コイシイヒト



「ごめんね」

「だから、どうして謝るの?」

「だって、わたしが健史を巻き込んでる……」



これ以上進んだら、本当に戻れなくなる。

終止符を打てなくなるよ……。


だから、その前に――



健史から離れようとした瞬間、

健史の腕に引き戻された。



「そんなふうに言うなよ」



え……




「謝ってほしくない」




暗闇の中の健史の声が、

とても切なく胸に響いた。



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