コイシイヒト



今すぐ抱いてほしい。

この胸の中に包まれたい。


心の奥で、強くそう思った。


けど、だから出来ないよ。

大切な人だから、ここから先に進んじゃいけない。



健史の胸をそっと突き放したわたし。

上手く微笑もうと必死だった。


「夕実……?」

「ごめん……って、やっぱ謝る言葉しか出てこないや」


前髪を整えながら笑ったわたしに、健史が口を開いた。


「夕実、罪悪感があるの?」

「え……?」

「今、罪悪感で苦しんでる?」



暗闇なのに、空気の緊張感から健史に見つめられてる事がわかる。



罪悪……感?


わたしは自分の胸の答えに驚いていた。




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