コイシイヒト
大切な家族がいるのに、罪悪感なんてなかった。
あれだけ大切にしてきた家庭だったのに、
いつからか夫婦に隙間が出来て、わたしは変わってた。
それでも子供のために守らなきゃって。
幸せな家庭を築いていかなきゃって思ってたのに……。
今、
目の前に健史がいることで、わたしは母でも妻でもない
ただの女になってた……。
怖い。
こんな自分、怖いよ……。
「夕実……?」
小さく震えだしたわたしを、健史は抱き締めてくれた。
わたしはその腕を、すがるようにぎゅっと掴んだ。