コイシイヒト



「夕実」


その声に、

胸の鼓動が大きく揺れる。


振り返った視線の先に居たのは、高校生の頃の面影がある大人になった健史だった。


「たっ……健史」

「久しぶり」


動揺を隠せないでいるわたしを前に、健史がにっこりと微笑んで右手を上げた。


「う、うん。久しぶりだね」

「今来たとこ?」

「うん」

「そっか。じゃ、入ろ」



扉を開く健史に背中をポンッと押され、呼吸が苦しくなった。


健史の手の平だけで、体中の遺伝子が思い出したかのように騒ぎだしたんだ。



忘れたはずの

あの温もり。







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