コイシイヒト
「トイレ待ち?」
男子トイレの方が混んでる?
トイレのドアに目を向けたわたしに、健史が口を開いた。
「夕実、飲みすぎじゃない?」
「えっ?」
「お酒、あんま強くなかったよな?」
思いがけない言葉に目を丸くした。
もしかして、心配して待っててくれたの?
「ふふっ、健史お母さんみたい」
「は?」
「心配しなくても大丈夫だよ。これでも大人になってお酒強くなったんだから」
なんだか可笑しかった。
ううん、嬉しかったんだ。
健史、覚えててくれたんだね。