短いの【ショート集】


生まれ変わったら、またあの燃えるように赤い箱の煙草に火を灯すのだろうか?

───僕の吸うのは情熱のように真っ赤な箱の煙草。真っ赤が重く、憧れの大人に近づけるような気持ちになれた。

そんな気持ちを忘れさせたのは彼女だった。彼女は煙草は吸わない。変わりに白い煙を吸った。
白い煙は新鮮な匂いがした。何もかもを忘れさせてくれるかのように。

何時しか部屋には白い粉と白い煙が漂うようになっていた。その部屋に何時までも寝転がっている俺が居た。

煙草は吸わなくなった。ようやく憧れや闇や後悔から解放されたような気がした。

そして何時までも眠り続けた。
真っ白になるまで、何時までも。









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