短いの【ショート集】
視線合戦は膠着状態に入る。相手ももう簡単には受け流してはくれず、何度目かの視線の交差の末、互いに一歩も退かない熱い見つめ合いが時を止めた。
相手は同級生。互いに中年。その親父同士が見つめ合いながら揺れる電車。暮れる日没。結ばれた熱視線。夕日が奴の頬を紅く染める。
俺は繋がる視線の対話と意気の投合に快感すら感じながら、車掌のアナウンスを聞いていた。
最寄駅への到着と、熱い見つめ合いの終焉の合図だ。
互いに同じホームに降り立った時、自然と口を開いていた。
「久し振り!やっと声をかける事が出来たよ」
驚く程スムーズに、そして素直に。
それもあの熱い攻防があったからこそであろう。
「あんた誰?さっきから驚く程チャック全開で中から変なモノ見えてますよ」
俺の視線は股間に落ち、勝敗は決した。
完