短いの【ショート集】
──夢。
俺は夢を実現にする決心をした。
夢とは言っても寝て見る夢なんかじゃあない。本物の……、将来の願望を叶える想い。
長い高校生活最後の年。三年の友人達は皆、それぞれの将来について語らうようになった。
希望する進路は様々だ。しかし誰もが希望に満ち溢れ、自分の定めた未来をしっかりと見据えている。
しかしそんな中、俺だけが進むべき道を今まで足踏みして決めかねていた。
安定した将来を見据えて大学を出ておいた方が良いのはわかるが、ありきたりなサラリーマンになるのは何か違う。
長い間頑張ってきた部活を活かして、スポーツの世界で邁進するのは華やかだ。が、如何せん生命線が短すぎやしないか。
いっそ国家資格をとって公務員で安定を手に入れるか……、それとも法律を学び弁護士でも目指そうか。
医者になりたいとは思わないが、開業医になんてなった日には、収入が大いに見込めるはずだ。
調理の世界で腕を磨き、料理人として匠の技を極めるのもいい。
……なんて事をあれこれと考えると、目の前に広がる将来は限り無く沢山の道に別れ、その全てが輝く選択脈なのだ。
幾ら悩んでみても悩み足りない位なのだが、友人の一人がある日こう言っていた。
「俺……、将来は自分の一番好きな事をして働きたいんだっ」
その言葉を聞いた俺は「はっ!」とした。
そう。世間体や収入。地位や学歴。
そんな物で自分の未来を決めていいのか……と。
自分の好きな事。自分の好きな物。そんな事は考えずともはっきりしている。
声を大にして言える。
──学校。俺は学校が好きだ。
学校が大好きだ。この質素で古びた箱の中には生徒の笑い声が溢れ、グラウンドではかけ声が高らかに響く。
勉強だけじゃない。この場所で沢山の事を学び、そして成長して行く魔法の宝箱。
いつか今の自分のように、この箱で語らい巣立つ未来の生徒と触れ合えるなら、それはどんなに素晴らしい事だろう。
考えただけでも自然とわくわくしてしまう。