空へ。‐夢の先‐
紗姫「…麻姫…!」

麻姫「!!」


あたしの顔を見た瞬間、表情を変えた麻姫。


やがて走って玄関を出て行った。



ずき、と心が痛む。


紗姫「麻姫、!」


たまらず追おうとしたあたしを里緒がバカ力で止めた。


紗姫「里緒…!?」




里緒「あたしらが行くよ」

紗姫「は、何で…」


里緒「同い年だし。つーか姉貴には分かんねーこともあるっしょ?」


沙也香「そう、むしろ他人のほうがええってこともあったりすんねんよな。


お母さん、紗姫さんに受けた恩はしっかり返しまっせ♪」



母さんに向かってアヒル口にピースをする沙也香。



里緒「ほら、例の双子の男の人。

大変なんしょ?そっち行ったげなよ」

沙也香「そういうこと!ほな里緒、行こか」

里緒「おう!」




食べてたお菓子片手に、挨拶だけはキッチリして玄関を飛び出して行ったリオサヤ。

そのあとに、あたしは気がついた。



紗姫「まさかあいつら、最初からそのつもりで…」



母「頭がいいのか悪いのか分からない子たちね…」

紗姫「母さん、その呟き何気に失礼だから」



母「…さすが沢木さんね…」

紗姫「………………」

母「……本当にいい子たち、」



もういないリオサヤを
凄く優しい目をしながらそう呟く
母さんの言葉に少し照れくさくなったから、あたしは突っ込むのをやめた。






頼んだよ、リオサヤ。



あんたらのことは何だかんだで信用してんだから…。



あたしの妹、救ってやってよ。



あんたらの、確かな心と言葉で。




リオサヤは信頼できる、きっと大丈夫。



苦楽を共にしてきた対等な仲間であり、あたしたち劇団全員の“妹”だから。



きっと、大丈夫。




そう思いながら、あたしは玄関を出て

となりの家へ足を運んだ。
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