空へ。‐夢の先‐
少しの間立ち尽くして



あたしは決めた。


このまま逢わないなんて絶対できない。



何で章介はそんな借金を負ったの?

どうして病気になるまで自分を追い込んだの?




…何も納得できないまま、大事な幼なじみが苦しんでる理由も分からないまま


何事もなかったように
帰ることなんてできない。





あたしは階段を駆け上がった。


通いなれた部屋の前
あたしはどんな状態の章介が待っていようと

全部受け入れる覚悟でドアノブをひねった。










章介「……かね、金…金、金、かね、…金、」






紗姫「………しょう、すけ……?」



章介「金…、かね…」




落ち着きなく、ぐちゃぐちゃになった部屋の中を漁り続ける章介。




声が出なかった。



今すぐにでも話がしたいのに

何も言えなかった。




章介「…ごめん、今かねがないから…」


紗姫「章介、章介…何言って、」


章介「…すぐ…すぐに用意するから下で待ってて…」




ずいぶんとやせ細った体。


いつもチャラめにセットされていた髪は

前髪も分けていないボサボサ。


かなり悪い顔色。


目の下のくまも


ずっと泳いでる目も



すべてが章介じゃない別人のようだった。



首をつかまれたように
声が出ない。




何やってんのあたし…


さっき決めたじゃん


どんな状態でも受け入れるって…





何も言えず、ずっと立ち尽くしていると

章介の様子がおかしくなった。



章介「…すいません…、」

紗姫「……………」

章介「すいません、すいません…すいませんすいません」

紗姫「……章介…?」

章介「すいませんすいません…すぐ用意しますすいません許して下さいすいません…!!」



紗姫「…章介…!?章介…っ、」
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