空へ。‐夢の先‐
葛城「…だからヒメも、逃げちゃいけない、」


紗姫「……………、」


葛城「本当に大切なら愛さないと」


紗姫「……………」




葛城「自分を犠牲にしてでも、自分がどんなに辛い想いをしてでも愛さないとダメだ」




紗姫「………そう、だよね…」


葛城「…でも無理にしなくていい。

受け入れて愛することだけが正しいことじゃない」


紗姫「………………」


葛城「“正しいこと”は1人1人違うから。

…受け入れられないなら逢わないのが愛することだよ。」


紗姫「………でも……、」



葛城「お礼がしたいんでしょ?」


紗姫「……うん…」



どうしてカツラギは


いつもあたしの心が分かるんだろう。




葛城「今のヒメはその子を受け入れられるか分からない、

でも、守ってくれたお礼がしたい」


紗姫「うん、」


葛城「……だったら守ってあげなきゃ、」


紗姫「…………」


葛城「……今度はヒメが、守ってあげなきゃ」




笑いかけるカツラギの顔を見て

さっきとは違う意味の涙が目に溜まる。



カツラギがそばにいるときは、心にある何かがスッととれる。




紗姫「……ありがとう…カツラギ…」


葛城「俺は何もしてないよ」



ポンと背中を押されたのをきっかけに

あたしは歩き出した。




葛城「ヒメ、Have a nice day」


紗姫「ばいばい、」




カツラギに手を振るとき、少し笑顔になれた。




向かった先は杉本家。



もう、逃げたくない。




…もう、章介に傷ついてほしくない…。


生半可な覚悟は捨てた。



不安は消えない。


だけどあたしはひたすら歩いた。

章介に逢うために。
< 116 / 125 >

この作品をシェア

pagetop