空へ。‐夢の先‐
─────ガチャッ。



暗い部屋。



悠太の靴はなくなっていた。

おばちゃんもまだ帰ってないんだ…。




そう思って踏み出す。


一歩を踏み出すたびに、ドクンと心が揺れる。



リビングに灯りがついてるのが見えた。




章介かな…。



ぐっ、とドアノブを握る。



ドクンとなる心臓を無視して、あたしはドアを開いた。






紗姫「…章介……、」




かすかな声で名前を呼ぶと、水を飲んでいた章介は振り返って


あたしをジッと見つめた。




紗姫「…調子はどう?大丈夫?」



自分でも
信じられないくらいに優しい声が出た。



章介「…さ、き…」


紗姫「そうだよ、」



ガシャン!!



持っていたコップを落とす。

そしてその場に崩れた章介。



紗姫「章介!!」


章介「…さき、…紗姫ごめん…、」


紗姫「章介大丈夫!?」


涙を流す章介の肩をつかむ。



章介「…さき、ごめん…ごめん俺…っ、」


紗姫「お願いだから謝んなよ…章介何もしてないから…っ、」


章介「俺ひとりじゃどうにもできなくて…っ!!

母さんや悠太たち巻き込んでもう何もできなくて…紗姫にまで…、

ごめん、ほんとに…ごめん、ごめんなさい…」


紗姫「もういいよ…もういいから…っ、」



たまらずにその細い体をぐっと抱きしめる。


とまったはずの涙がまた溢れ出す。





章介「…俺もう無理だよ…、」





耳を疑う言葉が聞こえた。




章介「さきごめん…俺、もう無理だ…、」




震えたかすかな声で
章介はそう言った。
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