空へ。‐夢の先‐
あたしがいじめられた日。


グレた日。


叱られた日。


喧嘩した日。


泣いた日。



いつもとなりにいた章介は、口癖のようにこう言った。





『さーき、大丈夫だって♪俺がいんだろ!』





その章介が目の前で
“もう無理”


そう言っている。

たくさんの涙を流しながら


たくさんの苦しみを抱えながら。



前のあたしなら
何も言えずにただそばで泣くだけだった。




守ってもらうのはもう終わりにしよう。


これからは



あたしが…章介を笑わせる。



あたしが章介の手を引く番だ。



いままで何度も
守ってもらって
笑顔をもらった




今度はあたしが章介を守って笑顔にする。


それが、あたしの唯一できるお返しでしょ?





紗姫「章介…ありがとう」


章介「………っ、」


紗姫「守ってくれてありがとう…っ、」


章介「さきっ…、」


紗姫「…章介…大丈夫、…あたしがいるから」


章介「…うっ…、」


紗姫「…今度は…あたしが守るから…」





章介「…紗姫…っ、」





紗姫「…………、」


章介「…さき、さき…っ…」



章介は、泣きながら
あたしの頬に触れて

何度も何度もあたしの名前を呼んだ。



あたしは、ずっと章介の手を握っていた。





─────────…


章介が疲れて眠ったころ、帰ってきた悠太と話をする。
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