空へ。‐夢の先‐
紗姫「章介の女って誰だったっけ?…たしか芸能界じゃなかった?」

悠太「…お前変な気おこすなよ?」

紗姫「分かってるっつーの!」




幼なじみにそこまで野蛮だと思われていたなんて。

何だかショック。




悠太「女優の御坂ユリア。」


紗姫「御坂ユリア…」



できることなら今すぐぶん殴ってやりたい。


だけど女優なら同じ土俵で戦える。



そう思ってなんとか抑えたイライラと怒り。



だけど悠太のもう一言を聞いて衝撃を受けた。





悠太「御坂ユリアはまだあんまり名前知れてないけど…」


紗姫「……………?」


悠太「その姉の

麗崎マリアは紗姫も知ってるだろ?」




麗崎マリア…?




悠太「芸能界だけじゃなく色んなとこで顔広いらしくてさぁ、

まあ麗崎って名字は芸名で
本名は御坂らしいけど


その姉の名前使って章介に色々言ってたみたいで…

許せないよホント…」



はあ、とため息をつく悠太。



麗崎マリアって

龍くんを陥れた…。






悠太「…紗姫「ごめん悠太」


悠太「……………」



紗姫「今日は帰るね」






“麗崎マリア”


その名前が、一度引っ込めた怒りをまた引き出して

あたしの心の中を真っ黒に染め上げた。




怒り、とか

許せない、とか



そんな簡単な言葉では表せない感情が

あたしの中に積もる。



今まで感じたことのない怒り。


心が冷静で

燃え上がるようなものじゃない静かな怒り。




寝ている章介の横に
買っておいた章介の好きなココアを置いて


悠太と買い物が長引いてたおばちゃんに見送られ



あたしは自分の家に帰った。
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