空へ。‐夢の先‐
しばらくスタッフさんがセットのことや
撮影のことについて説明してくれる。



となりの里緒や沙也香は目を輝かせていた。

あたしにとっても凄く新鮮で、何もかもが輝いて見えた。


共演者の女優さんや俳優さんを見て、その場にいるメンバーで盛り上がった。


すると、撮影のため
衣装とメイクを終えた沢木さんがやって来た。


龍「お待たせしてすみません!」


沢木さんは

まだあたしの見たことなかった“俳優 沢木龍”の顔で

周りのスタッフさんや共演者の人に
ていねいに頭を下げて謝っていた。


顔つきも、まとっている雰囲気も全く別人のようだった。



ドク、ドク、と


心臓の音が少しずつ大きくなっていくことを感じた。







色んな準備やチェック、確認が終わり

今からする撮影は、沢木さんが爆発事故の起こったビルの中で
泣いてる子どもを説得するシーン。



何度かリハーサルを終え、本番という声がかかる。



スタッフさんからもらった沢木さんのボロボロになった台本を握りしめる。



ドク、ドク。


また次第に鼓動が大きくなる。



スタッフさんや監督さんが準備をして

沢木さんともう1人のレスキュー役の菅原さん

それに子役の小さな男の子の健くん。



ここについて、結構な時間がたっていた。


妙に緊迫した雰囲気。


あたしたちは、
自然としゃべらなくなっていた。



ドクン、ドクン。


ドクン、ドクン。


台本を握る両手に力が入る。



ドクン、ドクン、


「本番入りまーす!」


ドクン、ドクン。

ドクッ─────


監督「よーいスタートぉ!!!」



カンッ─────。
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