空へ。‐夢の先‐
どんどん速くなる心臓、見入っていたあたしは

カットと叫んだ監督さんの声で我に返った。



心がぐっと、締め付けられるような気分。


凄い、としか言いようのない目の前の世界。



ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。



また騒がしく動き始める現場。


目の前で見た世界に

足が動かなくて

そのシーンだけが頭の中で流れていた。




─────────…

また長い間の準備が終わり、次の本番になる。



「次は沢木さんの最終シーンになります。

頑張りましょう!」



チラッと沢木さんの方を見れば、すでにスタンバイして何かを感じるように目を閉じていた。



何度もリハーサルをして、本番。



落ち着きだしていたあたしの心臓はまた速くなっていく。



何でこんなに心が踊るのかも分からない…


なのに…全てがキラキラと輝きが増す


夢じゃないことを確かめるようにしっかりとその“世界”を見つめる。



あたしの見ていた世界と目の前の世界は

全く違っていた。



トク、トク、トクン、ドクン、ドクン───────




監督「本番行くぞー!

────よーい、スタートぉ!!!」






龍「"ハァ…ハァ…っ、進藤…っ、あのガキの両親救出成功した…"」


菅原《"やった…!進藤さん…ほんとにお疲れ様です!"》


龍「"…はぁ、…竹村…、"」

菅原《"はい…!?"》

龍「"…はぁっ…今…、お前が救った命を…っ、お前のとなりにある命を…、絶対に見失うなよ…っ、"」


菅原《"…進藤さん…?"》


龍「"その人たちは…、お前の宝だ…っ、"」


菅原《"……………はい…っ!"》



龍「"…ハァッ…すぐに、戻る、…ハァ…"」

菅原《"待ってます。…帰ってきたら…もっと色んなこと教えて下さいね…"》


龍「"…ああ、"」
< 25 / 125 >

この作品をシェア

pagetop