空へ。‐夢の先‐
龍「"…はぁ、はぁ……ッゴホッゴホッ!!



…はぁ、…親父…、俺は…っゴホッ!!

…っ、生きてた時も…死んだあとも…

…誰も泣かさない人生だったぞ…

ざまぁみろ…っ、"」




────ゴォォオ…





龍「"ほんとに…


…いい人生だった"」





「───カット!!!」



────ポロッ


無意識に、温かい雫が頬を伝った。



出来上がった映画を見たわけじゃない。


BGMの音楽が涙を誘ったわけでもない。



ただ、ただ



生でみた"芝居"というものは、

一言で説明なんてできないほどに


刺激的で、雄大だった──。





何度も何度も、言葉、シーンの1つ1つが

心の中に鮮明に残っている。




この日、この場所で


あたしはこの世界に、恋をした。





─────────…


「進藤優役、沢木龍さんクランクアップです!!!」


「お疲れ様でした!!」

「お疲れ様でした〜!!」



大きな花束を受け取った、ボロボロのレスキュー隊員姿のままの沢木さんは

少しだけ涙ぐんで

それでも嬉しそうに、笑っていた。





監督「君が龍のいとこか?」


成二「……あ…?」



沢木さんと握手したあとに、成二に近づく監督さん。


お構いなしに睨みつける成二。



監督「…いいなぁ。
龍にないものを持ってる」


成二「……うるせぇな…、」

百合「成二くん!!」


監督「構わない構わない、元気でいいな!」



ガン飛ばす成二を見てニコッと笑った監督さんは、どこか沢木さんと似ている気がした。



龍「監督、こいつは俺が完璧な俳優に育て上げます

その時はどうかよろしくお願いします」


監督「ああ、楽しみにしてるぞ龍!」

龍「はい!」



成二「…くだらねぇ、…」



成二は何かを考えているように、そう呟くと

さっさとバスへと帰って行った。
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