空へ。‐夢の先‐
龍くんは、あたしの過去を知ってるからこその
優しい笑顔を向けてくれた。


そうだ、もしもあの時、高校に行くことを決めなかったら
あたしに本当の友達はできなかった。


もしもあの時、
龍くんと話すことを断っていたら
あたしに夢なんて持てなかった。




生きてれば良いことが必ずあるかなんて分からないけど。


毎日すべてに諦めて生きるよりは
毎日すべてに期待して生きるほうが


少しは楽しいんじゃないだろうか。



紗姫「…分かります!!!」


あたしがそう言って笑うと、龍くんも照れくさそうに少し笑って


龍「…成二んとこ、ついてきてくれるか?」


そう言った。


紗姫「はい!」




─────────…


1−A


そう書かれている札を前に、あたしたちは心の準備をした。

ひときわ目立つ数人の男子の笑い声が聞こえてくる。


龍くんがドアに手を掛けた。


ガラッ



ざわめいていた教室は、一気に静かになった。


教室の後方には、やけに気合いの入った不良が集まっていて

その中心に、成二がいた。

あたしたちは成二の前に立つ。



成二「…何しにきたんだよ」



目の色が変わり、鋭く睨みつける成二。


龍くんはそれに笑顔を返した。



龍「正式にスカウトしに来た。

俺の劇団に入れ、成二!」



龍くんの言葉のあと、また少しずつ教室がざわめいた。


成二「…てめぇまだそんなこと言ってんのか」


龍「ああ、来い」


「おいおいおい、待てコラおっさん、なあ?

お前誰だよ。意味わかんねーこと言ってんじゃねーぞ、」


成二の横から出てきたのは、この中で唯一見た目が少しチャラそうな不良だった。



龍「……いいな、」

「あ?、」

龍「動きに順応性がありそうだ、」

「おい、何の話してんだコラ」

龍「君もやるか?芝居!」

「…舐めてんのかオメェ」


やばい、目がキラキラしてる…。

龍くんスカウトモードだ。
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