空へ。‐夢の先‐
紗姫「………?、」


「ひとり?」


振り向けば、年上っぽいオシャレな数人の男の人たち。1人は帽子を深くかぶっていた。


紗姫「…あ、いや…」



やっべこれナンパじゃね?
初だよヤッホーイ


…ではなく。



「彼氏と来てんの?」

紗姫「いや彼氏じゃないですけど…、」

「なんか縮こまって可愛いー♪」



縮こまりもするでしょーよ。あんたら怖い。


「一緒に買い物しようよ」

紗姫「いやちょっとそれは…、」



引きつった笑顔でなるべく気の悪くならないように対処するも

なかなか引かない。

イライラしてくる。




成二「お前ら何してんだよ」


紗姫「…成二、」




今にもキレそうになったとき、成二が来てくれた。


成二「つーかお前も何やってんだよ」

紗姫「いて、」


あたしの横に並ぶと
荷物を片手に持った成二は、後ろから手のひらであたしの後頭部を軽く押した。


男たちに近づく。



成二「昼間からこんなとこで高校生ひっかけてんじゃねぇぞ、」


成二の持つ妙な迫力に、男たちの顔が強張る。

そして、しぶしぶ去っていった。



紗姫「ありがとう、ゴメンなせー…」

成二「全くだよ」


相変わらず少し前を歩く成二の背中を小走りで追いかければ

呆れかえった、それでもどこか柔らかくなった成二の横顔があった。








「何だよアイツ、」

「マジむかつく」

「高校生のくせに…なぁ?太一?」



帽子を深くかぶった男──生野太一(いくの.たいち)は

ゆっくりと帽子を上げて紗姫と成二の後ろ姿を見つめていた。



太一「…やっぱり」

「え?」

太一「沢木龍の新劇団員…

前川紗姫と沢木成二だよ!」

「は!?まじかよ!?」

「やべぇよ、あの沢木龍の劇団員とモメたっつったら…、」

「沢木龍は芸能界でスゲェ顔広いんだろ!?」

「俺ら新人モデルなんか一気に消されちまうんじゃ…!」
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