空へ。‐夢の先‐
しばらく携帯とにらめっこしてると、風呂上がりの父さんが話しかけてきた。



父「紗姫?、」

紗姫「あ、父さん」


振り返って笑うと、父さんも力なく笑った。



父さんは3人目のお父さん。



1人目は瑠姫姉と仁喜が産まれたあと離婚したらしくて

2人目はあたしと麻姫と笑喜の父親。



酒に溺れて、愛人作って。

母さんやあたしたちに暴力ばかり振るっていたことしか覚えていない。




心を閉ざした母さんの前に現れたのが、今の父さん。



母さんはもちろん、あたしたちにも本当に優しくて、6年前にお父さんになった。

そして、産まれたのが唯喜。



みんなはいっぱい喜んだ。

父さんと唯喜が、あたしたち家族に笑顔を取り戻してくれた。



あたしが荒れてた時期も、見捨てず見守っててくれた。


一生懸命働いていて、部下にも上司にも慕われているけど



昔、大暴走族の総長だったことは誰も知らないだろう。




父「楽しかった?」

紗姫「うん、東京メンバーだけなんだけどね」

父「そっか、明日は行っちゃうんだよなぁ」

紗姫「そうだね、」

父「紗姫…こんなこと言うのはおこがましいんだけど、」

紗姫「え、なに?何でも言ってよ」




父「…厳しい世界だぞ?…続けられるのか?」


紗姫「………………」


父「…沢木さんは若いのにご立派だと思う。

でも本当に紗姫をあずけて大丈夫なのか不安なんだ。」


紗姫「父さん…」


父「…こんな俺でも
…大事な紗姫の父親でいたいから」


紗姫「…何言ってんの、」

父「……………」

紗姫「あたしの父親は父さんだけじゃん

そんなこと言わないでよ。」


心配そうな父さんの目があたしを見つめる。
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