空へ。‐夢の先‐
今日の夜から稽古始まるんだなぁ。


どんな感じなんだろ。


今からワクワクがとまらない。



携帯を取り出して、顔合わせで友達になった同い年の麗奈に電話する。



紗姫「あ、もしもし?麗奈?」

麗奈《うん。どうした?》

紗姫「もう着いた?」

麗奈《寮?》

紗姫「うん」

麗奈《着いたよ。そろそろ里緒と沙也香も着くころ》

紗姫「そっかぁ…楽しみだね」

麗奈《うん》

紗姫「…がんばろうね、」

麗奈《そうだね、》

紗姫「麗奈と美子と同じ部屋がいいなあ♪」

麗奈《ああ、そうだね、切実に》

紗姫「はは、じゃあ、夜ね?」

麗奈《うん、じゃあ》



今日から

運命が変わる。


ワクワクが止まらない



風を感じて、静かに目を閉じた。


ここだけは時間がゆっくり流れていくような気がした。




『初めまして、俳優の沢木龍です』




『あんな親父の血引いてるあたしなんか…
どうせ何やったって同じだよ』





変わっていける、そんな気がした。





‐数時間前、大阪‐



「沙也香見たでテレビ〜!」

「何で言ってくれんかったん!?」


沙也香(何やねん今まで上辺だけやったくせに…)



2時間目の終わり、帰り支度をする沙也香の周りに集まる生徒たち。



沙也香「はは…、まあみんな今までありがとうな」

「メールするな!」

「頑張って〜ほんま応援しとるから!」


沙也香「…ありがとう、」



沙也香(…何やねん…
今までうちなんか誰かのオマケ扱いで

見向きもせんかったくせに…)



沙也香は俯いた。

汚いことを考えるのが嫌で、周りのみんなの目を見たくなかったから。






「さ〜やか〜〜!!!!」


沙也香「…………?」


急に廊下に響いた声。

焦って顔を上げると
バタバタと走る音が聞こえた。


ガシャン!!


声の主は、教室の窓を乱暴に開ける。
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