空へ。‐夢の先‐
成二「…………………きたねぇってよ。」


紗姫「ん?」


成二「…あのヘルメットの女。


野球とバイクしか興味なかったからよ…
…泥だらけの手じゃ汚くて繋げねーんだと。」



少し照れくさそうに
そして虚しそうに


壁にもたれかかって
腕を組んだ成二はそう言った。




紗姫「…別にそんなことないじゃん。」



あたしは、何だか切なくなって

触れている単車をまた優しく撫でた。





成二「……………」




紗姫「それは成二が本当にコイツを何日もかけて修理してあげたり

心こめて洗ってあげたりした証拠でしょ。」



成二「………………」



紗姫「…成二はそれでいいんじゃん。

いけないことなんかないよ」



だって、コイツが本当に嬉しそうな顔をするから。




成二「………………さんきゅ、紗姫」




成二が、少しだけ笑ったのが分かった。



すると、成二も作業場に入って来て

近くの棚をあさって何かを取り出した。





成二「おら、それかぶって待ってろ」


紗姫「いたっ、」




ズッシリと頭にきた重み。

それが何かはすぐに分かった。


成二はズカズカと家の中にあがっていく。


近くの窓に顔を写せば、真新しい綺麗な黄色のヘルメットをかぶったあたしがいた。



紗姫「わ、」




きゅん、と

胸が締め付けられた。



成二の笑顔を思い出すとドキドキする鼓動。




今まで感じたことのない感覚。



あたしの中でこの感情を表す言葉は、ひとつしかなかった。




どうしようもなく愛しくなる気持ち。





そうか、これが




“恋”ってやつか。
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