空へ。‐夢の先‐
沙也香「……ただの仲間じゃないって、」


春樹「…沙也香ちゃんは俺と話してるとき
その話題に触れなかったけど…


有名な噂だから知ってると思うんだ。


…俺が同性愛者だってこと。」



沙也香「…………、」



春樹「ま、正確にはバイだけどね、


…ごめんね、ファンでいてくれたのに

傷つけちゃって…、」


沙也香「いや…それはつまり、龍くんのこと…?」


春樹「………そう、」




少しの沈黙に無理をして表情を変えない春樹。

しかし手元は震えている。




沙也香「…………なんや、ホモの噂ほんまやったんすか!」



春樹「…………?、」



ケロッとした表情でそう言った沙也香。



沙也香「いや、相手にはビックリしましたけど

うちそんなん別に偏見ないタイプなんすよね〜!」



うはは、と笑う沙也香に意外な顔をする春樹。

きっと、困った顔をされると思ったから。





沙也香「うちはそんなんひっくるめて、中島さんのファンっすよ!」





満面の笑みで、そう言う沙也香に

春樹も安心したように笑いかけた。



沙也香「……あ!たこ焼き!!中島さん、たこ焼き!」

春樹「…え!?たこ焼き!?」

沙也香「早く早く!東京じゃなかなか食えませんよ!屋台のたこ焼き!!」

春樹「え、食うの!?」

沙也香「うっす!」



息なり窓の外を見て大声を上げた沙也香に

春樹は慌ててブレーキを踏んだ。




沙也香「おいっひ〜♪♪ありがとうございまふ中島さん♪♪」


おいしそうにたこ焼きを頬張る沙也香。


春樹「ったく、このばか」

沙也香「いたいいたいっ」


春樹は目の前のふっくらした頬を引っ張って笑う。

その手は、震えてはいなかった。





───“…絶対運命だ…、”



そう思った相手が、今、目の前にいる幸せを


今、笑っている幸せを


自分を受け入れてくれた幸せを




春樹は静かに噛みしめた。
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