気になる背中
背中
図書館に行った帰り。
たまたま、大塚君を見かけた。
(大塚君だ……)
駅で、本当にたまたま。
その姿を見つけてしまっただけで、好きになったと自覚してしまった私の心臓は激しく音を立てる。
恋したってダメだって頭ではわかってる。わかってるのに、こんなにも心は正直で、目が離せなくなる。
「神崎……?」
ふいに視線が絡んで、大塚君がぽつりと私の名前を呼んだ。
「……やっぱり神崎だ!また偶然だな」
駆け寄りながら声を掛けてくれて、にこりと優しく頬笑まれる。そのことにとてもほっとした。
だって、この前は「一緒にいることない」って言っていたから。お兄ちゃんたちが付き合ってるからって、自分たちまで親しくすることはないって。
そう言っていたから、だからまた声を掛けてくれたことにとてもほっとした。
大塚君のことだから、きっとただのクラスメイトの誰にだってこうして気さくに話し掛けるのだろうけど……。
「今日は、ひとり?」
「う、うん。図書館に行って、その帰りなの……」
ドキドキと心臓の音がうるさいくらい。
なんとか平静を装って返事をするけれど、体中熱くてたまらない。
「そっか……あのさ、この前は」
「おー!陸ー!!」
大塚君がなにか言い掛けたその時。
遠くの方から、彼を呼ぶ声が聞こえた。