気になる背中


するとちょうど電車がやってきて、ホームは降りる人でいっぱいになった。
その時、同じ学年の女の子とすれ違った。さっきの男の子と同じく、顔は知ってるけれど名前も知らない子だった。


「あー!陸ー!」

その子が突然大きな声を上げた。
呼んだその名前にどきりとした。

思わず振り返ると、改札に駆けていくその女の子と。そして、その子に手を降る大塚君が見えた。



(あ…そっか……)


大塚君は、
あの子と待ち合わせしてたんだ。

なんとなくそう理解して、ぎゅっと胸の奥が切なくなった。


(彼女さん…なのかな……あ、でも彼女さんは年上って言ってたから、お友達かな……。

大塚君って、友達多いもんね……)

そんなことをぼんやりと考えて、
その"友達"の枠に入れもしない自分に、とても惨めな気持ちになった。


なんだか見ていられなくて、改札の方からすぐに顔を背けて前に向き直る。
すると、ちょうど乗ろうとしてた電車のドアが、目の前で閉まってしまった。

乗りそびれてしまって、「あっ」と思わず声が出る。


(私って本当に鈍臭いなぁ…)


そんなことを思いながら、次の電車を待つためにホームのベンチに腰掛ける。夏の日差しに照らされたベンチが、とても熱かった。



(大塚君とさっきのあの子は、もう行ってしまったかな……)

(夏休みに待ち合わせして会うくらいだから、きっと仲もいいのかな……)

(もしかしたら、やっぱり大塚君の彼女だったのかもしれない……)


ぐるぐる、ぐるぐる。
色んなことを考えてしまって、無意識に溜息が零れた。

次の電車が来るまでの僅かな時間も、今の私には途方もなく長く感じられた。


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