気になる背中
そうしてその日の夜。
奈々子ちゃんに言われた通り、大塚君へとメールした。
誘ってくれてありがとうという気持ちと、けど予定があって行けないという事をメールに書いて送った。
その送ってすぐ後に、大塚君から電話が掛かってきた。
『…急にごめん。メール見た。わざわざありがとう』
「う、ううん!こちらこそ、誘ってくれたのにごめんなさい」
大塚君からの電話に、私はつっかえながらも言葉を返す。顔が見えない分、まだなんとか声がちゃんと出るから良かった。顔見てたらまともに話せないから。
ドキドキと高鳴る心臓を抑えるように、以前大塚君から貰ったぬいぐるみをぎゅうと抱き締める。
「本当は、私も参加したかったんだけど……」
『いいよ。予定あるんだろ?急に誘ってごめんな……』
「ううん。こちらこそごめんなさい」
『あのさ……、』
「うん?」
大塚君が少し切羽詰まったみたいに声を上げる。どうしたんだろうと言葉の続きを待つと、思いもしなかった質問をされた……。
『……メールで、水曜は中学の先輩と会う約束があるって書いてあったけど』
「……うん、そうだけど……」
確かにそんなことを書いた。
今度の水曜は、中学の頃とてもお世話になった先輩と会う約束がある。
その先輩とは今の高校も一緒だから。今でも仲良くしてもらっていて、時々一緒に出かけたりしている。
けど、それがどうしたんだろう…?と、疑問に思う。
『それって、男……?』
「……へ?」
『その先輩って、男じゃないよな?』
大塚君の切羽詰まったような声が強くなる。普段聞かないような強い口調に、どきりとなる。
「……ち、ちがうよ。先輩は女の人だから…」
びっくりしながらもそう返す。
すると、電話の向こう側から微かに溜息の零れる音が聞こえた。気がした。
『そっか、よかった……』
「よかった?」
『いや!なんでもないから!
ごめん、メールありがと。じゃあ』
「え?あ、うん。ばいばい」
電話がきれる。
(大塚君、そんなこと聞くために電話したきたのかな……)
なんでだろう。
電話がきれた後も、手は携帯電話をぼんやりと握り締めたままだった。