気になる背中


「よかったって……」

さっきの、大塚君の言葉をぼんやり口に出す。よかったって、どういう意味でだろう。

先輩のこと女の人だって知って、安心してたみたいだけど……。

けど、そんなのまるで……


(大塚君が、私のこと……)


……そこまで無意識に想像してしまい、まだドキンドキンと心臓が高鳴る。



「……そんなわけ、ないよね」

ぎゅっとぬいぐるみを抱き締めて。恥ずかしい思考を振り払うようにぽつりと呟く。


(勘違いしちゃ、駄目だ……)



目を閉じれば、先日の駅での出来事が嫌でも思い浮かぶ。

可愛らしい子だったと思う。
私と違って明るくて、元気が良くて。
大塚君のことを「陸」って、名前で呼べて……。



思い出すたび、胸の奥がチリチリと痛む。

私は、あの子の様にはなれない。
なれるわけない。
だから、勘違いしちゃいけない。
考えちゃいけない。


(忘れなきゃ、いけないな……)


この気持ちも、全部全部。
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