気になる背中
「あの人、2年生?かっこいい先輩だねー……って、澪?大丈夫?」
あの人が行ってしまうと、奈々子ちゃんが私の顔を覗き込むようにしてそう訊ねた。
奈々子ちゃんのその優しい声に、緊張の糸が切れたかのか、いつの間にか私は涙を零していた。
「ちょっと、澪!?どうしたの!?どこか怪我したの!?」
「だっ、大丈夫だよ……っ」
つっかえつっかえになりながら答えると、奈々子ちゃんが私の頭を撫でた。
「さっきの先輩に、なにか言われた?」
「ち、違うよ……っ」
「じゃあ、どうしたの?」
「えっと……っ」
私が答えられないでいると、そのまま授業の開始を告げるチャイムが鳴ってしまった。
「あらら。チャイム鳴っちゃった」
「ご、ごめんっ、奈々子ちゃ……っ」
「んー?いいよいいよ。保健室行ってサボっちゃおっか」
奈々子ちゃんはそう言ってにっと悪戯っぽく笑った。
そうして私は、奈々子ちゃんに連れられるまま保健室へ向かった。