気になる背中


急なことですごく恥ずかしかったし、顔だってまだぐしゃぐしゃだし……。


そんな恥ずかしさから、視線を逸らすように顔は自然と俯いてしまった…。


すると、下を向く私の視界の中に、すっとノートが入ってきた。


数学

1-3

大塚 陸



ノートの表紙に書かれた文字を見て私は顔を上げる。

驚く私に、目の前の彼はにこりと笑ってこう言った。



「使って。さっき休んだ授業の分、コピーいるだろ?」

「……い、いいの?」

「うん。次の授業までに返してくれればいいから」

「あ、ありがとう……」

「どういたしまして」



たったこれだけのことなのに、なんだかすごく嬉しくなった。


一冊のノートで、さっきまでもやもやしていた私の気持ちは不思議と晴れていった……。


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