気になる背中
「昨日、陸君と神崎さんが付き合ってるなんて知らなくて、失礼なこと言っちゃったでしょ」
そう言葉を付け足される。
昨日、廊下で陸君と一緒にいた桜井さんに声を掛けられた。
「一緒に教室に行こう」と。
あの時はなんだか無性に悲しく思えてしまったけれど、でも桜井さんが謝るような事じゃない。
むしろ、私なんかに声を掛けてくれて…て、思うとありがたくさえ感じるのに…。
「陸君のこと好きになりかけてて、それで、舞い上がっちゃってたと言うか…
だから先走ってあんな風に声掛けちゃって…ほんとごめんね?気分悪くしちゃったよね…」
桜井さんはそう言って、しょんぼりした顔で私を見る。
私は慌てて首を横に振った。
「ううん。こちらこそ、ごめんなさい…
せっかく声掛けてもらったのに断っちゃって……、その…2人が仲良さそうな姿にちょっと嫉妬しちゃって…」
桜井さんが素直な気持ちを伝えてくれたように、私も素直に自分の気持ちを伝えた。
嫉妬したことを話すのはやっぱり恥ずかしかった。
「…神崎さんって可愛いね」
「…へ?」
ふいに桜井さんが変なこと言い出して、私はびっくりして思わず間抜けな声が漏れた。
「陸君が好きになるのわかるなぁ」
「えっ、えっ?」
にこりと微笑まれ、また変なことを言い出すから、私はあたふた。
「自覚なさそうなとこも可愛いすぎる。確かにマジ天使かも」
「えっ、あの…っ」
なんだがすごく恥ずかしいこと言われてる気がする。私はなんて言っていいかわからなくて…。