気になる背中
彼女
その翌日。
私は朝一番に、大塚君にノートを返した。
自分から話し掛けるのはすごく緊張したけれど、話し掛けると大塚君はにこりと笑みを浮かべてくれた。
「えと、えと、……数学のノート、ありがとうございました」
「どういたしまして。
……ってか、なんで敬語?」
思わず敬語になってしまった私に、彼は気さくに笑い掛ける。
ちゃんと話したことがないせいか。それとも、彼とは住む世界が違うと感じてるせいか。
そんないろいろな理由で私の口からは敬語が出てしまう。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、別に謝らなくてもいいけど……。神崎っておもしろいな」
「えぇっ!?そ、そんなことないよっ!!」
大塚君の言葉に、慌てて否定する。
すると、そんな精一杯否定する私が可笑しかったのか、大塚君はまた笑った。
恥ずかしくなって、私は逃げるように席を立った。