気になる背中


そして放課後。

いつもと同じように図書館に行こうとする前に、奈々子ちゃんに捕まった。


奈々子ちゃんは私を女子トイレに連れ込んで、そこで私に化粧を施した。


「ほら、ちゃんと隈消えたでしょ?」

「そ、そうだけど…化粧なんて私…」

「大丈夫!澪似合ってる!!」



ファンデーションで隈を隠した後、目元のメイクもされて、ビューラーで睫毛を上げられてマスカラまで付けられてされてしまった。


それだけなのに、なんだか随分雰囲気が変わったのような気がする。



「澪って弄り甲斐があるわー」

「もう、遊ばないでよ。どうせ似合ってないんだし…」

「似合ってるって!澪は可愛いんだから自信持ちな!!」


奈々子ちゃんはそう言って、ポケットの中からリップを取り出した。


「じゃあこれ付けたら完成ね」

と、私の唇にリップを塗った。


ピンク色のリップは、ほんのり甘い香りがした…。



「よし!完成!!」

奈々子ちゃんが満足そうな顔で頷いた。

鏡を見ると、なんだか自分じゃないみたいな自分がそこに居た。


< 52 / 214 >

この作品をシェア

pagetop