気になる背中
「あー、ごめんごめん」
大塚君の言葉に相沢さんがすっと立ち上がる。
そんな相沢さんを見て、大塚君は私の方をちらりと見た。
「2人って仲良かったっけ?」
「まぁねー。今日から親友なの!」
と、大塚君に話し掛けられた相沢さんはそんな風に答えた。
私はなんだか恥ずかしくて俯いてしまい、2人の話には入れなかった。
チャイムが鳴ると、相沢さんは自分の席に戻って行き、大塚君は私の前の席に着いた。
「……あのさ」
大塚君がふいに私の方を向いた。
目と目が合う。
こんなに短い距離で視線が合うのは始めてかもしれない。
私は突然のことに驚いて動けなかった。そして、合わせた視線も逸らすことは出来なかった。
大塚君はなにか言おうと口を開きかけた。
けれど、教室に先生が入ってきたので、その口はすぐに閉じて前に向き直してしまった。
大塚君はなにを言おうとしていたんだろう……。
授業中、彼の背中を見ながらそんなことをずっと考えていた。