気になる背中
先生が教室に入って来て、HRが始まった。
プリントを数枚と、夏休みの宿題が配られた。
もう夏休みなんだ……。
と、窓の外のを眺めながらそんな風に感じた。
窓から見える空は青くて、入道雲が浮かんでいて、耳を澄ませば蝉の鳴き声が聴こえてくる…。
まさに"夏"って感じがして、夏は苦手なはずなのに、なんだか楽しくも思えてしまう。
そんなことを考えていたら、「神崎」と、小さく呼ばれた。
はっとなって前を向くと、大塚君がプリントを手にこっちを見ていた。
「これ」
「あ。うん、ありがとう」
前から送られてきたプリントを受け取りながら、そう返事をする。
その時、指先が少しだけ触れた。
それだけのことに、体がびくって反応してしまう。
「どうかした?」
「な、なんでもないよ…」
不思議そうな顔をして尋ねる大塚君に、そんな風に誤魔化した。
いつまで経っても男の子に免疫がない自分が恥ずかしくなる。
今どき小学生だって、こんな風に異性を意識したりしないだろう…。
自分が恥ずかしくて呆れる気持ちとは裏腹に、心臓は音が聞こえてしまいそうなくらい激しく脈打っていた。
全身が熱くなっていくのは、きっと夏の気温のせいじゃなくて…、
目の前に見える背中の彼のせい。