気になる背中
「猫飼ってるんだ…」
大塚君の話の始まりはそんな言葉だった。
「ねこ?」
まったく思いもしなかった言葉に、私はきょとんとなってしまった。
そんな私に、大塚君はいつもより暗い顔をして話を続けた…
「拾って来たのも世話してるのも姉ちゃんだけど、俺もそれなりに可愛がって世話してるんだ…。
だから、そいつに懐かれてると思ってたんだけどさ…」
「うん」
「けど…、今日の朝ねずみの死骸を部屋に持って来られた」
「え?」
「嫌われてんのかな俺…」
そう言って大塚君は深い深い溜め息を零した。
私はというと、大塚君の話にぽかんとなっていた。
あまりにも予想外。
それに、あれこれ悩んでいた自分がすごく馬鹿みたい。
大塚君もこんなことで悩むなんて…。
そう思うと、思わず笑いがこみ上げてきた…。
「ちょ、笑うなよ。俺、これでも真剣に悩んでんだけど…」
「ご、ごめんなさい…、でも…っ」
少し拗ねたように言う大塚君に、私は申し訳なく思いながらも、やっぱり笑いを堪える事はできなかった。