気になる背中
…そして、少し落ち着いた頃。
私は大塚君に教えて上げた。
「あのね、猫が飼い主にねずみとか捕ってくるのは、よくあることなんだよ」
「まじで…?」
「うん。
…えっと、飼い主に餌を捕ってきたり、狩りを教えようとしてたり、捕ってきたのを褒めて欲しかったり…
そんな理由だから、決して大塚君のこと嫌いに思ってるわけじゃないんだよ」
…むしろ、信頼されていたり、好かれている証拠だと思う。
そう伝えると、大塚君は大きな溜め息を吐いた。
「よかったー…、嫌われてるんじゃないんだ…」
そう言って嬉しそうに笑みを浮かべる姿が、なんだか可愛い。
「あーもう、すげぇ恥ずかしいんだけど…。そんなに笑うなって」
私がまた笑ってしまうと、大塚君は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「あ。それじゃ今朝遅刻して来たのって…」
「うん。庭にねずみの墓作ってたせいで遅刻した」
その言葉に、私はまた笑ってしまった。
なんていうか、すごく可愛い。
大人っぽくてしっかりしているのに、猫のことですごく真剣になって悩んで…。
そう思うと、遠く感じていた大塚君の存在がすごく近くに感じられた。