てのひらの中の世界
0.Prologue
“仕方がない”と受け入れなきゃならないことが、溢れていたあの頃。
てのひらの中で溢れそうになった思いは、いつこぼれ落ちてもおかしくないほどに、常にギリギリの世界をさ迷っていた。
離してしまえば簡単。
壊れてしまえと思ったこともある。
けれど臆病者のあたしに、てのひらの中の世界を解放する勇気なんてなかった。
少なくとも、“臆病者だった、あの頃のあたし”には。
さよならが、胸が引きちぎれそうなくらい悲しいものだと知った春。
もう出会いなんていらないと思うほどに。
誰があたしを必要としてくれているのか。ただ、それだけが知りたかった。