てのひらの中の世界
あたしの思考は置いてけぼりのまま、授業が進んでいく。
とりあえず右手にシャープペンを握ってみたはいいけど、先生の話なんてまるで頭に入ってこない。
代わりに脳内を占めるのは、一昨日の夜の出来事。
2日前の金曜日。学校が終わったあと、あたしは学校の最寄りから2つ隣の駅の改札にいた。
改札のすぐ隣にあるベンチ。そこがあたしたちの待ち合わせ場所だった。
約束の時間はとうに過ぎているというのに、彼の姿はそこにはない。
って言っても、一目見てお互いを判断できる関係でもないんだけど。
とりあえずベンチに腰をおろして、iPhoneのLINEを開いてみる。
“駅着いたよー”のあたしのメッセージは既読になったままだけど返事はない。
時間が過ぎていると言ってもほんの10分。もう少しここで待ってみようかななんて思っていた時ーーー
ふいにLINEで電話がかかってきた。
「あ、もしもし華澄?今駅着いたー。どのへんにいる?」