てのひらの中の世界
数日前に写真で見た人物が、初めて今目の前で動いている。しゃべっている。
そのことに違和感を感じながら、でもやっぱりちょっとかっこいいなー、なんて
変な人じゃなくてよかった、っていう安心感の方が大きかった。
「今来たばっかだから、ってデートのよくあるやりとりじゃん」
そう言ってそのキレイな顔をちょっとだけ崩して笑う。くしゃっとした笑顔はかわいかった。
「んー、そうだな、近くにさ、結構評判の居酒屋があるみたいなんだけど、そこ行こうよ」
「調べたの?」
「当たり前だろ、大人ですから」
付け加えた一言に思わず笑みがこぼれる。笑ったあたしに彼も笑う。
そんな些細なやりとりさえ楽しかった。