年上王子様とのアリエナイ××①


知らなかったんだ。

婚姻届。

右側の証人の欄にお父さんとお母さんの名前が書かれてあったことも。


翔さんが事前にお父さんとお母さんにお願いしてたことも。


二人の家族からは離れてしまったんだって思うと急に寂しくなって。

涙が溢れそうになる。


「そうか」


寂しそうな声。

お父さんも寂しい?


あたしと同じ気持ち?


「柚子。これからは北原家の奥さんとしてがんばりなさい」



涙ぐむような声が電話から伝わってきて

それがあたしの涙腺を更に緩める。



「あ、ありがとう」


いつもありがとう。

お父さんがいてくれたからあたし

ここまで育つことが出来たんだよ?


「柚子?」

お父さんからお母さんに変わる頃には既に涙がぽろぽろ溢れていて。

お母さんの涙声が聞こえてくる。


「おか、あさ、ありが、」



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