年上王子様とのアリエナイ××①


「俺はまた..」

あの時のようにまた..


「柚子様はあのお方とは違いますよ」


分かってるさ、


「もう少しご自分の好きになった方を信じてみてはどうです?」


だから分かってるって言ってるだろ?


「翔様、柚子さんは私から見ても翔様を本当に愛していますよ」

「何で分かるんだよ、そんな事..」

「それは..」


電話口の榊の言葉が止まった。


そして


「柚子様もあのお方と同じくらい、いえそれ以上にあなたを大事に想っているのが
伝わってくるからです」


電話口でニコニコ笑いながら言ってるんだろうな

想像するだけで腹が立つけれど。


でも榊の言い分も分かる。


信じる、か。


「では支社長資料の件に戻りますが..」


俺にもまだ人を信じる事が出来るんだろうか。

怖がらずに向かっていく事が出来るんだろうか。





そんな事を想いながら榊の言葉に黙って耳を傾けた。




< 176 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop