年上王子様とのアリエナイ××①
「俺はまた..」
あの時のようにまた..
「柚子様はあのお方とは違いますよ」
分かってるさ、
「もう少しご自分の好きになった方を信じてみてはどうです?」
だから分かってるって言ってるだろ?
「翔様、柚子さんは私から見ても翔様を本当に愛していますよ」
「何で分かるんだよ、そんな事..」
「それは..」
電話口の榊の言葉が止まった。
そして
「柚子様もあのお方と同じくらい、いえそれ以上にあなたを大事に想っているのが
伝わってくるからです」
電話口でニコニコ笑いながら言ってるんだろうな
想像するだけで腹が立つけれど。
でも榊の言い分も分かる。
信じる、か。
「では支社長資料の件に戻りますが..」
俺にもまだ人を信じる事が出来るんだろうか。
怖がらずに向かっていく事が出来るんだろうか。
そんな事を想いながら榊の言葉に黙って耳を傾けた。