年上王子様とのアリエナイ××①
「何で?」
不思議そうにあたしを見つめるその人に変にドキドキしてしまう。
あたしの心臓、どうしちゃったの?
「そ、そんな変な意味じゃないです!
ただ単に命の恩人の名前を知りたいというか何というか・・」
「別に命の恩人になりたくはないんだけどね」
やっぱりダメだったか
はぁとため息をついて前に向き直ってドアを引くと
「北原翔」
ボソッと小さな声が耳に入った。
翔さん..北原翔さん。
「ありがとう」
そうお礼を言って
今度こそ部屋を出た。
今日はあたしにとって一生忘れられない日になった。
きっともう二度とあの人に会うことはないけど。
あたしはきっと忘れない。
・・・そう思っていたのに・・
次の日あたしはもう一度北原さんに会って
そして彼からのとんでもない事を提案されることになるんだけれど。
この時のあたしはまだそんなことを知らずに
もう会えない寂しい気持ちのまま家路向かって歩き出した。