年上王子様とのアリエナイ××①

「は?」

驚いた顔をしてあたしを見つめる。


「あの時、父の経営する会社が倒産して、借金が残ってしまって。
それであたしに何が出来るか考えた時、自殺しか思い浮かばなかったんです。
あたしは保険に入っていたから。だから意を決して翔さんのマンションに行き、
そこで翔さんと初めて会いました」


瞳を閉じればすぐにその時を思い出す事が出来る。


「事情を知った翔さんは何をしたと思います?だったらここから飛び降りてみれば?って自殺をすすめてきたんですよ」

何て人だろうって思った。

何て酷い人なんだろうって。


「でも翔さんは教えてくれた。何が一番大切なのかを」

「だが私は」


「翔さんは何もかも捨てて逃げて生きてきたわけじゃないんです!!」

「..」

「だってそうでしょう?翔さんは普通の人以上に人の傷みが分かってる人なんだもの」

「だが何を言っても私の気持ちは変わらないんだ」



西山さんは黙ってあたし達のやり取りを見守っているだけ。

決して口を出して来ることはない。


でもこう思ってるんだろうな


“自分の妹もこうやって頼まれ続けてきたのか”と。



「柚子さん!頼む!!」


再び我に返るとおじい様があたしの近くまで来て手を取っていた。


そこから必死さが伝わってきて


でも何をされたって


「あたしは!!」

そこまで口にした時だった


「そうやって咲にも説得したんですね」




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