Escape
encounter
貯金はある。
貯金と言っても、自分で貯めたものではなく去年亡くなった両親のお金で、あたしの「もの」ではない。
でも、お父さんとお母さんは言ってくれた。
「困った時は好きに使いなさい」と。
ゆらゆらと電車の車両に揺られながら、目を瞑る。
瞼に映るお父さんとお母さん。
去年の今頃、お父さんとお母さんはこの世を去った。
一気に二人を失ったあたしは、どうすることも出来なくて、何も考えられなくて。
あたしも死ぬしかないと思っていた。
その時、そんなあたしを助けてくれたのは、あたしのイトコと名乗る上間奏日(うえまかなか)さんという男の人。
奏ちゃんはあたしに本当に良くしてくれた。
「何のタメにくるみを引き取ったのか分からない」……そう言われたとしても、
あたしにとって大好きな人。