コーヒー溺路線
 

松太郎の様子がおかしい。
彩子は切羽詰まった松太郎からの電話に、声に、戸惑っていた。
松太郎は今一度この部屋へ戻ってくる。
 

彩子は、松太郎が社長の子息であるという事実を知らない。
 

彩子が食事の片付けを済ませる頃玄関の呼び鈴が鳴った。彩子は皿を洗う手を止めて玄関へ向かう。
 


 
「はい、松太郎さん?」
 


 
扉を開けると松太郎が汗も拭く暇もない状態で立っていた。
驚いた彩子は慌てて松太郎を中へ通し、タオルを持って松太郎へ近付いた。
 


 
「松太郎さん、どうしたんですか」
 

 
「ああ、彩子、話しておかなければならないことがあるんだ」
 

 
「……」
 


 
ただならぬ雰囲気の松太郎に動揺を隠せず、彩子は黙り込んだ。
 


 
「松太郎さん、シャワーを浴びませんか?」
 

 
「えっ」
 

 
「ほら、汗が凄いです」
 


 
松太郎のこめかみに彩子はタオルをあてた。
松太郎は着替えを持ってきていなかったので戸惑ったが、彩子が直ぐに服を洗濯し乾燥機で乾かすと言った。
 


 
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