コーヒー溺路線
 

あの後コーヒーを飲み干し、二人は何とか出勤時間の八時半に間に合った。
二人で出勤をするのは避けようということはこれまでも暗黙の了解できたが、本日ばかりはそうも言っていられなかった。
 


 
「珍しいわね、富田さんが出勤時間ギリギリに来るだなんて」
 

 
「あ、少し寝坊をしてしまったので」
 

 
「そうなの。いつもは八時くらいに出勤するんでしょう?尊敬しちゃう」
 


 
出勤した彩子にまず話し掛けたのは小野梓だった。彩子のことを気に入っているらしい、彩子に何かとよく話し掛けている。
彩子はそれが嬉しかった。
 

ありがとうございますと言うと彩子はコーヒーをいれようと立ち上がった。
 


 
「藤山君」
 


 
ふと部長の根岸が松太郎を呼び出す。不思議そうな顔をしながら松太郎は根岸に近寄った。
彩子はそれをどことなく不安そうな面持ちで見ていた。
 


 
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